話題のサステナブルブランド「PIPATCHARA(ピパチャラ)」とは デザイナーに独占インタビュー アートとエシカルの融合 / Fashion bible by Rie Miyata
Fashion bible by Rie Miyata / https://riemiyata.com/fashion/71185/
伝統的な「マクラメ」がアイコンになっているサステナブルブランドが「PIPATCHARA(ピパチャラ)」。タイ出身のデザイナーが手仕事やナチュラル感、アート性などを調和させたバッグが人気です。ファッション業界でのキャリアが豊富なデザイナーのピパチャラ・ケオジンダ(Pipatchara Kaeojinda)氏に独占インタビューしました。
ピパチャラ氏はタイの首都、バンコクの出身です。アメリカ・サンフランシスコでファッションデザインの学位を取得後、ニューヨークのRalph Lauren(ラルフ・ローレン)本社でファーストキャリアをスタート。パリの「Givenchy(ジバンシィ)」や「Chloe(クロエ)」などのハイブランドでデザイナーとして経験を積みました。その後、タイを代表するファッションブランド「Jaspal(ジャスパル)」を育てました。
「ピパチャラ」ブランドを立ち上げたのは2018年のことです。ハイブランドでのデザイナー経験を持つ妹のピパチャラ氏と、サステナブルの専門知識を持つ姉のJittrinee(ジットゥリーニ)が立ち上げた、タイ発のブランドです。アート性と手仕事感が響き合うクリエーションは今のおしゃれトレンドにもなじみます。「ピパチャラ」の強みは結び紐の技術を使って編まれた「マクラメ」のモチーフ。世界各国で高く評価されています。
全てハンドメイドで仕上げているのも「ピパチャラ」の魅力です。タイ北部のローカルコミュニティで製作しています。雇用と収入の行き届いていない地域へ、マクラメの手工芸技術を通じて仕事と収入をもたらす取り組みです。使用される革は、イタリア・トスカーナ地方で製造された上質な素材で、地元産業の副産物です。
こうしたサステナブルな取り組みが評価されて、アメリカの経済誌『フォーブス』で「女性が設立したエシカルブランド 5選」に選ばれました。セレブリティが「ピパチャラ」のバッグを手にレッドカーペットやイベントに登場するケースも増えて、脚光を浴びています。
「ピパチャラ」の魅力や特徴、サステナビリティ、アート性などについて、デザイナー本人にうかがいました。
◆「ピパチャラ」のバッグが他のブランドのバッグと大きく違うのは、どういう点ですか? どこが優れていると思いますか?
――ブランドの存在目的は、ブランド側からアートと工芸を結びつけるという点で、世界のエンハンサー(引き立て役)の1つとなることです。
織りの技術と能力を鍛錬することで、地域社会の生活を向上させ、その見返りとして収入をもたらすことができます。並行して、ファッション業界において、労働を世界的な職人技に変化させることで、その価値をさらに高めることができるのです。
生活の調和は、デザインに関係なく、それ自体が無限に続いていく持続可能性の一部分として、環境保護の観点から私たちがどのように美しく生きているかを物語っています。
ラグジュアリー市場における差別化としてPIPATCHARAは、あらゆる場面でユーザーのライフスタイルを向上させる独自のアート&クラフトデザインを表現しています。
◆タイには伝統的な職人技が様々な形で受け継がれています。「ピパチャラ」の場合、どういったところにクラフトワークが生かされていますか?
――すべてのデザイナーは、様々な背景と経験からインスピレーションを得て、アートやデザインを見つめ直した時に、特別なものになるのだと思います。PIPATCHARAのすべてのデザインは、オリジナルのタイの生地パターンや高度な技術のタイジュエリーデザインなどを自分目線で組み合わせることにより、PIPATCHARAが表現する特別な現代風のマクラメに変えているのです。
◆ピパチャラのバッグは「マクラメ」の技術を取り入れています。どうしてマクラメを使おうと考えたのですか?
――私はこの功績を姉に譲りたいと思います。彼女はアートと工芸、そしてマクラメからインスピレーションを得ました。ある日、彼女が自作のマクラメアート作品を持ち帰り、私を驚かせる質問をしてきました。『どうすれば日々の生活でアートを感じることができるかな?』革製品に興味を持っていた私は、アートと革製品を融合できるアイデアを実現するあらゆる方法を考え、探していました。私たちは、自分たちが愛したアートとマクラメによって、手に取れるアートデザインとタイの伝統を表現した最高の結果をもたらすことができたのです。
◆米『フォーブス』誌が行った「女性が設立したエシカルブランド5選」に選出されています。エシカルな取り組みの具体的な例を教えてください。
――取り組みの一例を挙げます。
・地域社会のサポート:マクラメの結び方、織り方を教えて生活の新しいスキルにし、家族の生活支援のためにマクラメ作りから副収入を得て、社会的格差を減らせる地位社会のメンバーを増やすこと。
・環境と動物に優しい:現在使用している皮は、植物由来の材料(ビーガンレザー)であり、すべてサステナブルなものです。さらに、インフィニチュード・シリーズは、現在使用している既存のサステナブルな材料を使う代わりに、ボトルの蓋やプラスチックのフォーク、スプーン、プラスチック製の食品容器などをインフィニチュード・シリーズのバッグやドレスの材料として使用することで、我々の使命の1つであるサステナビリティを実現することができました。
◆数々のハイブランドでのデザイナー経験を持っていらっしゃいますが、洋服ではなく、バッグブランドを立ち上げた理由を教えてください。
――私は数々のハイブランドでのデザイナー経験がありますが、革製品に情熱を注いでいます。バッグとアクセサリーは、ブランドに利益をもたらし、革製品とアートと工芸に対する私の情熱を満たすものとなっています。
◆「ピパチャラ」のバッグを、上手にスタイリングするには、どのような点を意識すれば良いですか?
――PIPATCHARAバッグはそれぞれ、すでに独特のスタイルを持っており、お客様の個性を高めてくれます。お客様の好みに合わせた新しい表現方法(個性)を見つけながら、TPOに合ったものを選んでいただくことができます。また、最近のジェンダーフルイドのトレンドにおいて、SAMA BOX BAGやMINI AMUのようなPIPATCHARAバッグは、ユニセックスな使い方にも合うと思います。
◆バンコクで「Jaspal」のショップに行きました。欧米ハイブランドでの経験は、「ジャスパル」や「ピパチャラ」のデザインに、どのように生かされましたか?
――私の経歴はレディ・トゥ・ウエアの分野だったので、PIPATCHARAでバッグとアクセサリーのデザインを中心にするために、顧客のライフスタイルを理解するのにとても時間がかかりました。バッグをどのような機会に、どのように持ち歩くのか、というお客様のライフスタイルを知り、学ぶことは、様々な機会に使用いただく実用的な製品を産み出す手助けになりました。
◆デザイナーはアートへの関心が高いと聞いています。どういったアートに関心がありますか? そのアートへの興味はバッグデザインのどういった点に役立っていますか?
――アートと工芸はPIPATCHARAにとって重要な要素であり、我々が使うすべての技術につながるものです。
以上です。
ピパチャラ氏のインタビューから感じられるのは、とてもはっきりしたブランドポリシーです。長年の経験から導かれた、しっかりしたブランド哲学がうかがえます。特にタイに受け継がれている手工芸への深いリスペクトは、このブランドを特別な存在にしていると言えそうです。
サステナビリティへの真剣な向き合い方も印象的です。一般的には素材面が重視されがちですが、地域への仕事供給を通して、働く人たちを支え、地域をエンパワーメントする取り組みはソーシャルグッド性が高く、意義が大きいものです。手工芸の文化を継承することにもつながっていて、世界的に評価が高いのも納得できます。プラウドな気持ちに導いてくれるのに加え、アート性も高く、自分らしい装いに役立てやすい「ピパチャラ」のアイテムをこれからのおしゃれに取り入れてみませんか。
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